【読書】ベニー松山著「隣合わせの灰と青春」読了。読者は「灰と青春」に込められた作者の理想を知る。
読んだことあるかな?と思ったら初見。
今回読んだのは、幻想迷宮書店による電子書籍版。
初版も復刊も絶版でプレミアムがついていたりするので、電子書籍化はありがたい。
コンピューターRPGの元祖「ウィザードリィ」を題材に、想像の翼を広げた小説。
テキストと簡素なグラフィックだけのゲームに、想像で血肉をつけていたゲーム少年達の理想の世界を、具現化してみせた、といえば判りやすいか。
現代のコンピューターゲームとは違って、表現力の乏しかった時代のゲームには、コンピューター上では表現しきれない部分を、想像力で補っていたのだ。
ゲーム上では表現し切れなかった部分を、小説が補っていく。
ボルタック商店、カント寺院、訓練場、アドベンチャラーズ・イン。
ゲーム内での設定をふまえつつ、うまく血肉をつけていく。
冷静に考えると不条理な部分も、理屈をつけていく。
これは当時「ウィザードリィ」に嵌っていた者が誰もが考えていたことであろう。
後半は、ゲーム内の展開をふまえつつ、オリジナルな展開。
そして読者は「隣合わせの灰と青春」というタイトルに込められた意味を知る。
初版は、1988年。
小説のテクニックとしては稚拙な部分もある。
現代の目から見ると、甘甘なエンディングにも評価が分かれるだろう。
だが一つ断言できることは、出版当時に筆者が読めば、きっともっと夢中で読み、未だに語り継ぐ程の青春の小説になっていただろう。
今、夢中になるには、ちと色々知りすぎた。
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