【劇評】新作歌舞伎「風の谷のナウシカ」2019年12月新橋演舞場
大河ドラマとしての見ごたえは十分。原作を読んでいくと、より楽しめる
「風の谷のナウシカ」が歌舞伎化。
これだけでも耳を疑ってしまう出来事。
主演はナウシカ役で菊之助。
クシャナに七之助。
全七巻という物語。
昼夜通しといえどう劇化するのかと思っていたが、仮名手本忠臣蔵のように名場面集として構成したと、筋書で脚本の丹波圭子さんが語っていた。
夜の部のみ鑑賞。
アニメ映画に描かれたのは、原作2巻の途中まで。
そのためか、昼の部の人気は高く、戻りのチケットでは殆ど出てこなかった。
何度もテレビ放映もされたアニメ版とは違って、原作でしか描かれていない夜の部はほとんどの観客が初体験。
果たして原作を読んでから夜の部に臨んでいる観客は何人いるのだろう。
逆に、このお客さんが原作買ったら、原作本バカ売れ状態ではなかろうか。
自分も原作未読だったので、観劇の直前に全7巻を購入。
ワイド版で化粧箱入りだが1冊500円程度。
全巻で3130円+税。
はっきり言って安い。
歌舞伎関係なくても、みんな買って読むべきだ。
買ったはいいが、読み始めたのは観劇当日の朝。
出発時間になっても読み終わらず。
行きの電車の中でも読み終わらず。
演舞場の近くのファミレスでも読み終わらず。
幕間で読んでも読み終わらず。
原作を読んで、その直後そこを劇化した歌舞伎を見るという、稀有な芝居体験。
しかも第三場第四場は、ついに原作を読むスピードも間に合わなくなり。
物語のラストは芝居で見るという。
ある意味、原作付きの現代芝居だからこそできる経験をさせていただいた。
結論から言えば。
これは原作を読んでから望んでよかったと思う。
それでないと、全体の意味はくみ取れなかっただろう。
原作を読んで大きな流れが頭にはいっていたからこそ。
「あれはあの場面」「これはあの場面」と検討がついた。
登場人物にしたことろで。
プロローグで紹介があるとはいえ。
誰が誰やら把握できなかったであろう。
名前も特殊な名前で聞き取りにくい。
原作、とまでは言わなくても、筋書は必携である。
8日に菊之助がケガをした影響で、宙乗り等の演出は全部中止である。
宙乗り用のワイヤーも張られていたが、それが使われることはなかった。
それだけが目当て、という訳でもないが。
なんだか、損をした気分である。
それでも。
見終わった後の満足感は、中々のものであった。
「風の谷のナウシカ」の壮大な世界感とストーリーを上手に歌舞伎に仕立て上げていた。
なんといっても、ナウシカが世界の秘密にたどり着く過程を、きちんと見せている。
そのおかげで、ナウシカが出てくる場は動きが無く、話がわかならなければ退屈してしまうことも多々あるのだが。
返す返すも、菊之助の負傷と、演出の変更は残念であった。
宙乗りの演出がされていれば、もっとエンターテインメントに徹した、内容になったであろう。
現在の演出では、重厚ではあるがやや重いと言わざる得ない。
シネマ歌舞伎としての上映が決まっているが、どのタイミングで撮影したものになるのであろうか。
菊之助のケガが治ったあと。
本来意図した演出での再演を望みたい。
原作が読みたくなったら、下記のリンクからどうぞ。
頑張れば一日でも読めるけど、じっくり味わうなら3日はあった方がいいなぁ。
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