【歌舞伎・見物記】ひと足お先に夏気分♪「平成30 六月歌舞伎座 夜の部」
六月の芝居見物は歌舞伎座 夜の部 初日
初日と千穐楽。
取れる時には取ることにしているのです。
五月は千穐楽で、六月は初日。
この間、わずか一週間。
この間に役者は稽古をして昼夜別演目で板に乗せるのだから、大したもんですねえ。
一、夏祭浪花鑑(なつまつりなにわかがみ)
鳥居前
三婦内
長町裏
吉右衛門円熟の団七九郎兵衛。
さすがに、若い役者のような勢いに任せたスピード感はない。
しかし、鳥居前での一寸徳兵衛とのやり取り、長町裏での義平次殺し。
いずれも決まりがきっぱりとしていて、円熟の芸とはこういうものかと感じさせてくれる。
年齢的にも、吉右衛門一世一代になってしまう可能性もある。
見物するほうも、そういう気分で見たほうがいい。
歌六の釣船三婦。錦之助の一寸徳兵衛。菊之助のお梶。
いずれも上上出来。
演技どうこうだけでなく、初日から見事に調和が取れていた。
その調和が、それぞれの演技に深みを加え、それぞれの役が輝いている。
それは幹部連中だけでなく、端役の演技にも確実に影響を与えている。
それだからか、見取りにも関わらず、今までで一番話しの流れが分かりやすかった。
団七と伜市松のやり取りには、見物一同大いに和む。
役の上では父と息子だが、実生活では祖父と孫。
その辺りを重ねてみるのも、歌舞伎の楽しみ。
二、巷談宵宮雨(こうだんよみやのあめ)
深川黒江町寺門前虎鰒の太十宅の場より
深川丸太橋の場まで
松緑、出だしの台詞回しが固い。
芝居が進むと良くなるのだが、最初だけ妙に声を張ってしまい、なんだか世話っぽくなくなる。これは昔から気になっているところ。
芝翫の役が、思った以上の老け役だったので驚いた。
ほとんど出ない演目。前回の公演は1994年 8月。
初日だし、もう少しグダグダかと思ったが、しっかり仕上がっていたので驚いた。
前半は人情話のごとく進むが、後半になって一気に怪談話になっていく。
登場人物は気のいい連中ではあるが、どいつもこいつも小悪党のロクデナシ。
おとまにしたところで、人のいいおばさんの様だが、妾奉公が嫌で逃げ出してきたおとらに、結局は辛抱を強いてしまう。
初演時はこの辛抱も普通の事として見物衆に受け入れられていたのだろうが、時代の変化とともに何やらモヤモヤとしたものが残るようになってしまった。
この辺り、新作歌舞伎というものは難しいものである。
おとま役の梅花さん。
可愛らしい名前だし、どっかの部屋子の大抜擢かなと思ったら、二代目芝喜松さんだった。
若い子かと思ったら、全然ベテラン。
配役表だと、おとら役児太郎の下に名前があったので、てっきりおとらの友達かなにかの娘役だと思ったんだよ。
ちなみに芝喜松の名前は、29年4月に国立劇場の養成所から入ったお弟子さんが襲名。
師匠の前名をいきなり名乗らせてもらえるなんてすごい話だ。
夜の部は夏を先取り!
今月の夜の部は夏を先取りなお芝居二本。
「夏祭」は大阪のだんじり祭り。
「宵宮雨」は東京の深川八幡。
それぞれ代表的な夏祭りを題材にしています。
歌舞伎座で、一足早い「夏」を感じてはいかがでしょうか。
公演情報
歌舞伎座百三十年
六月大歌舞伎
劇場:東京 歌舞伎座
公演期間:平成30年6月2日~26日
見物日:6月2日(土)
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