【歌舞伎】團十郎白猿襲名披露!これぞ木挽町の賑わい!|2022年11月歌舞伎座「十一月吉例顔見世大歌舞伎」

十三代目團十郎白猿の襲名披露に行ってきました!

むっちゃいい天気!

東京・東銀座の「歌舞伎座」に、十三代目團十郎白猿の襲名披露興行を見物しに行ってきました!

やー!よかった!
さすがの團十郎襲名披露!

チケットはSOLD OUTで、歌舞伎座には「満員御礼」の垂れ幕がたなびいております!

平日の夜の部にもかかわらず満席ということで、歌舞伎座の中も外も大賑わい。
コロナ以前の木挽町の賑わいが戻ってきたようで、ちえも思わず眼がしらが熱くなってしまいました。

夜の部の演目は、「矢の根」「口上」「助六由縁江戸桜」の三本。

地下の木挽町広場では、十三代目團十郎白猿の在籍時間がカウントアップされ。

團十郎襲名披露セットが、110,00円と、まあまあな値段で売られ。

歌舞伎茶屋では、海老天の入った祝いそばが1,000円で売り出し。

協賛企業が名入りの提灯を拵えたりと。

新しい團十郎の誕生を寿ぐお祭りムードに、ちえの心も浮き立ちます。

歌舞伎座正面に戻ると、窓には歌舞伎座の座紋鳳凰と、成田屋(市川宗家)の紋三升の装飾があることに気が付きました。

事前によもだそばで腹ごしらえし。
おまけに銀座三越の日本橋弁松で弁当も調達。

満を持して、歌舞伎座内に入場です!

定式幕の代わりに三升の幕

客席に入って目につくのはやはりこれ!
いつもの定式幕ではなく、三升の紋が入った成田屋の幕。
今回の襲名披露のために、伊藤園から送られたものです。

白い布に柿色の三升の紋。
これだけでぐっと、

「ああ、襲名披露だ」

と気持ちが盛り上がります。

一、「矢の根」

16時開演。

幕が開いて。
夜の部の一つ目は、歌舞伎十八番の内の一つ「矢の根」

歌舞伎十八番というのは、七代目團十郎が制定した、團十郎家にとって大切な十八の演目の一つということです。

どんなお話かというと。

曽我の五郎時致が正月に、矢を研いでいると、大薩摩の太夫が年始参りに来ます。
太夫が帰った後に、雑煮の食べ過ぎで眠くなった五郎は、砥石を枕に寝てしまいます。
すると、夢枕に兄の十郎が夢枕に立ち、
「仇の工藤祐経の館に囚われている。助けてくれ」
と言ってきます。
慌てて飛び起きた五郎時致は、通りかかった馬子から馬を奪うと、大根を鞭代わりに、工藤の館にいそぐのでした。

んー。
こうやって話を書き出してみると、実に他愛のない話。
この曽我の五郎時致は、典型的な荒事の役で、古典的な荒事をたっぷりと見せてくれます。

五郎を演じるのは、十代目松本幸四郎!

普段は全然意識しないんですけど。
現・十三代目團十郎白猿と現・十代目幸四郎とは親戚関係なんですよ!

それぞれの曾祖父、ひいおじちゃんの十一代目團十郎八代目幸四郎兄弟なんです。

具体的にどんな関係かというと。

七代目幸四郎には3人の子供がおりました。
長男は、九代目團十郎の娘婿市川三升(死後、十代目團十郎を追贈)に養子に入り、後に十一代目團十郎になりました。
次男は幸四郎の名前を継いで八代目幸四郎になり、後に初代白鷗に。
三男は、六代目尾上菊五郎門下に入り、二代目松緑となりました。

さらに言うと。
八代目幸四郎は初代吉右衛門の娘を嫁に迎え。
長男が九代目幸四郎(現・二代目白鸚)、次男が二代目吉右衛門となり。

九代目幸四郎の長男が、現・十代目幸四郎になったというわけです。

こうやって書くと、戦後歌舞伎のルーツはほとんどが、七代目幸四郎に繋がっているのですねぇ。

1度目の幕間(30分)2種類目の引幕登場!

一つ目の演目が終わったら、1回目の幕間~☆

いわゆる、休憩時間ですね。
30分と長いです。

2種類目の引幕は村上隆デザイン

ちょっと体を動かそうかと座席を立った瞬間に。
さーっと幕が引かれて現れた引幕がこれ。

歌舞伎十八番が所せましとデザインされた引幕!

あとから知ったのですが、村上隆さんのデザインだそうです。
これも伊藤園からの贈呈。

というのも。
2階の吹き抜けの横に、大きな引幕を入れる箱が飾ってありました。

「へー!あの引幕、こんな箱に入れて送られるんだ~」

と思ったいたら、本当にこの中に引幕を入れて送る訳でないらしいですね。

昔は実際に入れていたんでしょうけど。
今はあくまで形だけだそうです。

河東節は旦那衆が演奏する

あと、助六といえば、この河東節本日の出演者

助六で演奏される河東節は、玄人ではなく、習い事をしている旦那衆が勤めることになっています。

正業を持つ旦那衆なだけに、毎日出演者が変るんですね。
だから、出演者の発表をこういう形でやるのです。

商売で成功し、趣味で河東節を習うなんて旦那衆にとって。
歌舞伎座の助六で演奏できるのはこの上ない名誉なことでしょうねぇ。

二つ目の演目は「口上」

幕間が終わって。
二つ目の演目は、「口上」。

口上ってのは。
襲名とか追善とか。
記念興行でやる挨拶の事で。

だいたい、幹部俳優がズラリと居並んで。
1人1人、挨拶を伸べるという演目(?)です。

これも、歌舞伎独特の演目ですね~☆

思うに、口上は。
SNSなど無い時代。
数少ない、役者同士の付き合いを知ることができる機会だったと思います。

挨拶を伸べる歌舞伎役者も。
目の前のお客さんを沸かせたいと思いますから。
色々、面白いエピソードを工夫するんですね。

今でも、役者の日常を100%、SNSで知れる訳でないですから。
思わぬ役者同士の話が聞ける。
とても楽しみな機会なのです。

今回並んだのは、

  • 白鸚
  • 十三代目團十郎白猿
  • 八代目新之助
  • 仁左衛門
  • 左團次
  • 梅玉
  • 菊五郎

の順。

白鸚が上置き?後見?で、まずご挨拶。
それから、仁左衛門、左團次、梅玉、菊五郎と挨拶があって。

昔は、襲名披露の時に襲名する本人はずっと頭を下げているだけで。
挨拶なんかしなかったらしいのですが。
今は普通にします。
見物衆も望んでいますし。

最後に十三代目團十郎白猿と八代目新之助の挨拶があります。

にらみ

挨拶が終わった後には、吉例にのっとり成田屋の「にらみ」
歌舞伎の「にらみ」って、聞いたことあります?
文字通り、大きく見得をしながら客席をにらむだけの芸なんですけれど。

江戸時代には、團十郎ににらまれると、風邪をひかないとか言われていたらしいですよ!

幕間(35分)お弁当タイーム!

口上が終わって35分の幕間!
この時間が、お弁当タイーム!

先月から、座席でのお弁当が解禁になったんですよ。

それまでは、そもそも歌舞伎座内での飲食が禁止だったり。
地下2階木挽町広場の「やぐら」買ったお弁当だけ、希望すれば歌舞伎座内の「花籠」で食べられたり。
段階的に、飲食を解禁してきたわけですが。

満を持して、11月から座席でのお弁当解禁!
まだ黙食前提ですが。

あとはお酒だけですね~。
コロナ前の歌舞伎座は、場内でお酒が売ってたりして、飲めたんですよ。
なにしろ歌舞伎座は大人の社交場ですから。

今回のお弁当は、銀座三越の日本橋弁松で買った、並六白飯弁当にしました。

日本橋弁松は、江戸時代から続く老舗のお弁当屋さんで。
出してるお弁当の中身も、辛めに煮つけられた煮物が中心と江戸前そのもの。
江戸の初期から続く、大大名跡である團十郎襲名披露に、江戸から続く江戸前の味を合わせようって趣向です。

歌舞伎座の座席で、日本橋弁松のお弁当を使っていると、ちょっとだけ江戸の芝居小屋にいる気分になりました。

三、助六由縁江戸桜

2回目の幕間が終わっていよいよ!

助六由縁江戸桜」です!

2017年3月歌舞伎座以来の「助六」。

5年ぶりくらいの「助六」です。

「助六」の演目は。
昔、團十郎がいなかったときは。
他のお家でも上演したみたいですが。
海老蔵や團十郎が健在な今。
市川宗家以外では出さない演目になってしまいました。

助六は、当然、海老蔵改め十三代團十郎白猿!

三浦屋の揚巻は、菊之助。

髭の意休は、尾上松緑。

全員同世代。
これからの「助六」を担うメンバーといっても過言ではありません。

脇を固めるのは、

白玉さんに、梅枝。

くわんぺら門兵衛に、仁左衛門。

朝顔仙平に、又五郎。

白酒売新兵衛に、梅玉。

福山のかつぎに、新之助。

通人里暁に、鴈次郎。

新旧入り混じる感じ。
福山のかつぎの新之助は、定番になりそうですね。
まだ子役の演技ですが、これが成長して、どんどん大人の演技になっていくのが楽しみです。

「助六」の主人公と「矢の根」の主人公は曽我の五郎

ところで。
「助六」の主人公と「矢の根」の主人公が同一人物なの気づいてました。
ついでに言うと、昼の部の「外郎売」の主人公も同一人物です。

いずれの主人公は、「実は曽我の五郎」。
矢の根は「実は」ではないですけど。
曽我兄弟の弟で、後に仇工藤祐経を討って日本三大敵討ちと称えられる人物です。

血気盛んな荒事の役で。
兄は十郎祐成。
「矢の根」では仇工藤祐経に捕らえられ、「助六」では白酒売りに身をやつして出てきます。

突然出てくる白酒売り新兵衛と母満江が1人で出る場面がある。

吉原に夜な夜な現れては、全方位に喧嘩をふっかける助六。
それを心配して、母満江、兄十郎祐成が吉原にやってくる。
というのが、助六の筋書です。

現行上演ではカットですが、ちゃんと満江が揚巻を訪ねて回る場面があります。
同じく白酒売り新兵衛も一人で出てくる場面があるのですが、それもカット。
ここまで入れちゃうと、上演時間が3時間越えちゃうから。仕方ないね。

新・團十郎の助六!しっかり声が出てる!

幸四郎の口上があって。
並びの傾城が出てきて。
揚巻が出てきて。
満江と揚巻が出会う場面があるのですが、ここはカット。
白玉と意休が出て。
揚巻と白玉が引っ込んだところで、やっと助六の出です。

ここまでが長い。
やはり新・團十郎には華がありますね。
でてくると、舞台がぱっと明るくなります。
5年前より勢いがなくなっているような気もしますが。
どちらかというと、素でやれていた部分が、徐々に技巧に傾いてきているのではないでしょうか。
若さと自分の内なる衝動を、助六という役に対応させて役を表現する。
昔はそれで十分見物衆も喜びますが。
徐々に年を取りますと、そういうわけにもいきません。
その時に必要になってくるのが、衝動と技巧のバランス。
團十郎を襲名することによって、今まで衝動でやっていた部分が、少し技巧よりになった気がしたんですよね。
そういう時って、一時的に演技が弱くなって。
「海老蔵も丸くなった」なんて言われがちなんですけど。
これを乗り越えたら、きっともっと素晴らしい助六に出会えるような気がします。

その証拠が声。
今までの新・團十郎(つまり海老蔵時代)は、声が内にこもってしまっている時があって。
よくセリフが聞き取れないなーと思ってました。
その辺は團十郎になったからといっていきなり変わるようなものでもなく。
襲名披露大丈夫かな?と心配していたのですが。

ちえが見物した回は、しっかり声が前に出てる!
時折裏返ることもありましたが。
なに、新・團十郎としては合格点です。
これを機に、諸先輩方と古典での共演を増やし、ぜひ大きな團十郎に育っていってもらいたいです。

ラストは助六が花道を掛けて行って柝

当然ですが、水入りまではやりませんでした。
時間がかかりすぎますからね。

つらつらと見ていると、髭の意休もそんな悪い人ではないんですよね。
助六が曽我の五郎と知って、意見しようとしてるし。
男伊達のなんたるかを助六に伝えようとするし。

そんな意休さんは、友切丸を持っていたが故に、助六に殺されます。
現行上演ではほとんどカットですが。
あ。ちなみに髭の意休は、実は伊賀の平内左衛門。
平家の残党で、友切丸をもって曽我の兄弟を味方に引き入れ、頼朝を滅ぼす計画だったようです。

20時終演!ここから飲みに行くのも丁度いい時間

20時ぴったりに打ち出し。
以前のような退場の案内がなかったので、それぞれのペースで退場です。

熱い、襲名披露公演の3日目が終わりました。
これから2ヶ月、歌舞伎座での襲名披露公演は続きます。
歌舞伎座が終われば、来年1月は新橋演舞場。
2月はお休みなのかな?
3月は地方巡業。
9月は博多座。
10月、11月は地方巡業。
12月は南座と。
十三代目團十郎白猿にとって記念すべき、大変忙しい1年が待っております。

そんな1年に及ぶ襲名披露公演の、最初の3日目を見れる環境にあったというのは。
大変ありがたい話でございます。

終演が20時ってのも。
飲みに行くにはまことに都合のいいタイミングでありがたい。

次は12月の歌舞伎座!

さーって!
来月も十三代目團十郎白猿襲名披露!
見物に来ますよ!
来月も夜の部!
もう一回「助六由縁江戸桜」を見物するつもりでいます。

今月とは團十郎以外の役者がほとんど変わりますから。
またどんな「助六由縁江戸桜」が見れるか楽しみです。

玉三郎の揚巻一世一代?

あと明記はされてませんが。
玉三郎が揚巻を最後にすると言ってるらしいんですよね。
5日から15日の、わずか10日間だけですから。
この辺りも見逃せない要素だと思います。

猿之助の通人も楽しみ

あとあと。
猿之助が通人を勤めるのも楽しみ。

今月の通人の鴈二郎も良かったけど、このところ話題の猿之助ですからねー。
どんな通人を見せてくれるのやら。

公演情報:歌舞伎座「十一月吉例顔見世大歌舞伎」市川海老蔵改め
十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台」

上演名「十一月吉例顔見世大歌舞伎」
市川海老蔵改め十三代目 市川團十郎白猿襲名披露 八代目 市川新之助初舞台
劇場東京・歌舞伎座
上演日時2022年11月7日(月)~28日(月)
演目夜の部
一、歌舞伎十八番の内 矢の根
二、十三代目市川團十郎白猿 八代目市川新之助 襲名披露 口上
三、歌舞伎十八番の内 助六由縁江戸桜

歌舞伎

Posted by ちえ