【歌舞伎】「歌舞伎座・鳳凰祭四月大歌舞伎 夜の部」円熟の芸と伸び盛りの芸が交差する|ちえの見物記

79歳と72歳の「与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)」

片岡仁左衛門 昭和19年生まれ 79歳
坂東玉三郎 昭和25年生まれ 72歳

70オーバー同士の「与話情浮名横櫛」。
通称「切られ与三」。

役者の年齢をあんまり強調したくはなんだけど。
やはりこの2人は驚異的だと思うし。
奇跡だと思う。

仁左衛門と玉三郎と。
同時代に生きられたことを感謝し。
今回は見物してきました。

悪ろうはずのない、与三郎とお富。
最近、なかなか付かなかった。
与三郎とお富が密会のあげく、赤間源左衛門に滅多切りにされる。
「赤間別荘の場」付き。

今回は、仁左衛門と玉三郎の演技が粒だって見えて。
最初から最後まで目が離せなかった。

「やはり帰る」と言い出す与三郎を。
寝屋に誘うのはお富。

放蕩に身を持ち崩したていではいるけれど。
それは後から生まれた実子の弟のため。
根はおぼっちゃんの与三郎に対し。

芸者上がりで所の親分の囲われ者のお富の方が、一枚も二枚も上のお姉さん。

2人が右の屋台に消えていくのを、ドキドキしながら見ておりました。

市蔵さんの蝙蝠安。
初日から左團次代役で出演している、権十郎さんの和泉屋多左衛門も良かった。

市蔵さんの蝙蝠安は、浮世絵に残る「四世尾上松助の蝙蝠安」を彷彿とさせ。
引き締まった体のこういう食えない感じの蝙蝠安がいいなぁ、と思わせる出来。

権十郎さんの和泉屋多左衛門も。
実直で当たりは丁寧だが。
抜け目なく与三郎を誰何する辺り。
大店の一番番頭を思わせてくれる。

主役の二人と周りの出来。
後世に語り継ぐべき、「与話情浮名横櫛」でした。

親子で勤める「連獅子(れんじし)」

尾上松緑 昭和50年生まれ 48歳
尾上左近 平成18年生まれ 17歳

「与話情浮名横櫛」で年齢を出したので、こちらにも出してみました。

親子で勤める「連獅子」。

親獅子と仔獅子が踊る演目なので。
当然のごとく、親子で勤めることが多い演目ではなりますが。

これは見ていて。
松緑の丁寧さ。
左近くんの一生懸命さが伝わってきました。

こういう見え方も、今この一瞬だけでしょうね。

子役から大人に差し掛かる17歳という年齢は。
どうしても役が付きにくくなる時期。
御曹司といえども例外ではなく。

そんな中で、父親と踊る親子獅子。
きっと力が入っていることだと思います。

一挙手一投足に丁寧さと勢いが同居し。
これはいい役者になるなと、思わせてくれました。

5年後、10年後。
大人の役が付き始めた頃が。
実に楽しみです。

円熟の芸と伸び盛りの芸が交差する
まだチケットもあるよ

もう一度見たいなと、チケットweb松竹をチェックすると。
まだ、1等席、2等席なら余裕がありそうです。
1等席、2等席のチケット代は、いいお値段しますが。
その分、臨場感は十分。

日付が合っていい席があれば。
ふんぱつして、もう1回行っちゃうかもしれません。

円熟の芸と、伸び盛りの芸が交差する「歌舞伎座・鳳凰祭四月大歌舞伎」
心に残る、芝居見物になりました☆

芝居情報

上演名歌舞伎座・鳳凰祭四月大歌舞伎
劇場東京・歌舞伎座
上演日時2023年4月2日(日)~27日(木)
演目夜の部
一、与話情浮名横櫛(よはなさけうきなのよこぐし)
木更津海岸見染の場
赤間別荘の場
源氏店の場
二、連獅子(れんじし)

歌舞伎

Posted by ちえ