【秋葉原・ランチ】東京でガチの伊勢うどんが食べられる店!「いなむら」さん

2020年11月19日うどん

ファッションご当地!

東京でご当地の食べ物を出すときは、大抵東京風にアレンジされると思うんですよ。
飲食店は商売ですから、店を出した以上は営業を続けていかなければならない。
最初は地元のものをそのまま出しても、次第にお客さんに受け入れられるようにアレンジしていく。
もしくは、最初から「○○風」でいくか。
「○○っぽいけれど、それをそのまま出しても食べなれない人は面食らうから、それっぽいようにアレンジしたものですよ~」と逃げ道を用意しておく。
いやぁ。逃げ道なんて言っちゃいけませんね。
企業努力ってやつです。
そういうのをまあ、「ファッション」と呼ぶことにしました。
上辺をご当地風に装った、という意味ですね。
うーん。書けば書くほど、マイナスな意味になっていく。
難しいなあ。
そういうの、否定はしませんよ。
それも含めて経営努力です。
お店、開店させたら存続させていくのが第一の目的。
オリジナルに拘って店を潰してしまったら、本末転倒です。

ファッションかと思ったらガチだった!

秋葉原で見つけた「いなむら」さん。
パッと見は、そういう「ファッション」のお店かと思ったんですよ。
伊勢うどんを、アレンジして東京でも受けるようにして出すお店かなと。
それでも、珍しさ半分で入ってみたんです。
時間は15時すぎ。
お昼時もとっくに終わった時間帯です。
入り口にお祝いの胡蝶蘭。
どうやらオープンしたてみたい。
「伊勢うどん580円」と表看板にあります。
安いか?と言われれば、そうでもない。
さりとて高いか?と言われれば、そうでもない。
微妙な価格設定です。
現地伊勢での平均価格が分からないので、高い安いはなんとも言えません。
その時の感覚では「安い」でしたが。

支払いは食券制。入り口横の食券機で食券を購入

食券を買って、店員さんに渡します。
鰻の寝床のような店内で、席はカウンターのみ。
入ってすぐ、券売機の横に陣取ります。
「お冷はご自由にどうぞ」
お水の入ったコップを置きながら、店員さんが冷水機を教えてくれました。

改めて券売機を眺めます。
最初はプレーンな普通の「伊勢うどん」を頼みましたが、他にはどんなメニューがあるのでしょう。
あれ? あれあれ?
「季節のメニュー」というボタンがありますが、準備中なようです。
そのほかに、飲み物のボタン。
そして肝心の「うどん」はというと。
「伊勢うどん」と「カレーうどん」しかありません。
カレーうどんは、チーズトッピングとかあるようですが、伊勢うどんに至っては「温泉玉子」と「うどんの玉の数」しか変化がありません。
たくさんボタンがあるなぁと思っていたのですが、よく見りゃ同じメニューを、多言語で書いてあるだけ。
国際都市秋葉原らしい、メニューの書き方です。
そして店内を眺めれば。
あちこちに貼られた「伊勢」と「三重県」のポスター。

(これは、この店は、ガチだ!

と、思い至ったところで、伊勢うどんが運ばれて来ました。

人生初の伊勢うどん

実は、恥ずかしながら、伊勢うどん初体験。
知識はあります。
讃岐うどん屋の息子と、伊勢うどん屋の娘が恋をする「歌うエスカルゴ」(「エスカルゴ兄弟」からの改題。津原 泰水・著)も読んだことがあります。
2018年5月8日号のイブニング掲載「瑠璃と料理の王様と(きくち正太・著)」にも、伊勢うどんが出て来ました。
でも、知識だけです。
なんか、ずーっと湯がいていて柔らかいうどんで、遠路はるばる伊勢参りに来た旅人に出すには、柔らかくて消化のいいうどんが最適で、おまけにイチから茹でるのではなく、茹でっぱなしのうどんをそのつど上げて出した方が、時間の短縮になり大勢の客もさばけてよしあしよしあし。
すみません。本当に知識だけです。

やってきた伊勢うどんは、うどんの上に葱と鰹節が乗った、シンプルなたたずまいでした。
「よく混ぜて食べてください」と店員さんに促されます。
箸立ての影に隠れていた小冊子に、「9回混ぜると幸せになれる」と書いてありました。
うどんの下にタレが敷いてあり、それを絡めるように混ぜていきます。


1回、2回、3回、4回……8回、9回!

混ざりました。
独特のビジュアル。
うどんを一本、前歯で噛んでみます。
柔らかい、が、想像していたよりは歯ごたえがあります。
讃岐の人なら卒倒しそうなコシの無さですが、くたくたに煮た麺が好きな東北人なので問題ないです。
一気にすすり込むのではなく、一本一本噛み千切りながら食べてみます。
東京の蕎麦文化とは、また違った食べ方です。
途中で、七味唐辛子を入れます。
唯一の調味料です。
辛味でパンチを加えてます。
ああ、おいしい。この味、好きだ。
底にタレが残っていたら、改めて麺を絡めてぬぐいさります。
完食です。乾杯です。
この一杯で、伊勢うどんが完全に好きになりました。

伊勢うどんは、葱とタレで完成形

食後の水を飲みながら、箸立ての後ろに隠された小冊子を改めてみて見ます。

「伊勢うどんは、葱とタレで完成形」と書いてあります。

先ほど、「この店はガチだ」と書きました。

これが「ファッション」のお店なら、多分掻き揚げくらいは置いてしまうと思うんですよね。
伊勢うどんはシンプルなゆえ、ついトッピングで客を取り込みたくなる。
東京向けに伊勢うどんの店をだそうと思ったら、自分ならそういう工夫をしてしまうと思うんです。
でも「いなむら」さんはそうではなかった。
シンプルな「伊勢うどん」で勝負してきた。
入れてもせいぜい温泉玉子。
基本は葱と鰹節で勝負してきた。
だから、「ガチ」だと思ったんです。
「ガチ」の伊勢うどんを。「ガチ」の伊勢うどん文化を広めたいのだと。
だからこそ、伊勢ならざる場所に住まうものとして、応援しようと心決めました。
伊勢の食文化を、他国の文化に染めるのではなく、ありのままに受け入れようと。
水を飲み終わり、「ごちそうさま」と店をあとにしました。
「お忘れ物なきように」と、暖かい店員さんの声。
「また来よう」と思いました。
できるだけ長く、東京のこの地で商売をしてもらうために。

ところで「いなむら」さんって、何者?

ショップカードをもらって来ました。
見れば「伊勢うどん専門店 いなむら 創業大正十二年」とあります。
この地で「創業大正十二年」、のわけがない。
ちょっと調べてみました。

と、言いたいところですが、「伊勢うどん いなむら」で検索かけても、秋葉原の「いなむら」さん以外出てこない。
伊勢市に「中むら」ってお店はあるようで、あるいは……
とは思うのですが、滅多なことは書けませんな。
今度、またお店が暇そうなときに伺って、聞いてきます。

なんかまた、波乱万丈な話が聞けたらいいなぁ。


お店情報
伊勢うどん専門店 いなむら 創業大正十二年
住所:東京都千代田区外神田1-8-6 渡辺ビル1階
営業時間 11:00~21:00 年中無休

年中無休ということは、個人店ではなさそうですね……

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